【施工業者選定のポイント】

1.規模に応じた業者の選定
 建築は業者間においてはトラブル産業とも揶揄される業界である。設計図書に則って完成まで完璧に問題なく終わることは大変難しい。その因果関係は建物の品質や出来具合、施主側から出される工事途上における設計変更、行政からの指導事項や近隣住民からの要望、又、時には突発的な経済のインフレによる極端な資材の高騰や逼迫など他多々挙げられる。又、建物が完成して終わるのではなく、完成後永い間にトラブルが発生しないようにしなければならない。このような状況に対応するには建物の規模や技術的な難易度に応じた施工業者の選定が重要である。10億円も超えれば大手ゼネコン、5億円以上では準大手、それ以下は地場の施工業者といった具合である。少なくともそれに耐え得る財務基盤や状況を知るために3期分程度の決算書をチェックしておく必要がある。又、施工業者の現場監督責任者の人柄や能力によっても段取りや出来栄えに影響する。手慣れてた設計事務所にしっかりとチェック並びに監理してもらうことが重要となる。

2.施工業者の発注選定方法
(1)設計施工
設計から工事完成まで一括して発注するケース。競争がない分工事費が高めにつくものである。えてして安い場合発注者側が一般的には建築の素人であるために、設備や材料の品質チェックが難しく、又、時には手抜き工事に対するチェックも難しい。先進諸外国では設計と施工は分離するのが一般的である。
(2)特命工事
施主の縁故や利害関係で施工業者をはじめから1社を指名して見積もりを出させ、発注者の希望価格になるまでネゴシエーションする。もし、合わなければ又、別の業者を指名して見積もりを出させてネゴを行う。決まるまで時間がかかる。
(3)競争入札
これには一般入札と指名入札がある。先にも述べたように規模に応じた業者選定が前提となるので指名競争入札となる。この場合、提出見積条件を平等にするために見積の拾い落ちや計算違い、その他をチェックし最低価格を提出した業者に一発で落札する。もし、予算を超える場合は価格の低い順にネゴを行い、予算に合わせる。但し、指名業者が前の施設の施工を行った業者や、規模が似たような業者で構成されると談合が起こりやすくなるので注意を要する。談合された場合は全く新たな業者を数社指名して再入札をかける。
(4)見積もり合わせ ジョイントベンチャー
見積もり合わせは数社から工事見積もりを取り面接も行い、業者の質、熱意、見積もり金額を勘案して発注者側の条件に一番適合する業者を選定する方法である。ジョイントベンチャーは選定した業者の技術や財務に不安がある場合、信用の置ける第二の業者と共同して受注させる手法である。

3.その他の留意事項
 分離発注:建物は解体せず、建築工事、設備工事、電気工事、外構工事、内装その他等に大きく分けられる。工事規模が大きい場合ゼネコンに一括するよりも全体工事が安くなる可能性が高くなる。但し、工事の全体責任が一社でないために問題が起こるとその解決が複雑になる。工事費の支払方法は通常契約時(手付金)上棟時、完成引渡し時に分けて支払われるが、完成後一括払いの場合は、金利が上乗せされ、むしろ工事費が高くついたり、又は優良業者には断れることもあるので避けたい。