激変する医療改革の中、今こそ戦略的な病院づくりを! その4


 本年度診療費の改定は医療保険にて3.16%減、介護保険にて2.4%減という衝撃的な数字である。しかも3年前に届出、整備された療養病床(介護保険病床)の平成11年度末にての閉鎖、さらに診療報酬の今後7%減額は必須とのコメント付である。今回の改定に対する対策は次回以降検討、提示するとして前回2004年度、1.0%減、前々回2002年度、2.7%減の折の顧問先医療機関にての実施した対策を紹介する。

【対策事例:埼玉県 M病院】
 当院にて減額改定の経営的影響をシュミレーションした所、特に外来部分のマイナスが大きく約5%の減収となる見込みと想定した。4代続いた医療機関として最初にして最大の経営危機の到来である。院長を主体として事務長、看護部長共々、協議・決定し実施した対策は次の諸点である。

●対策 その1
 当院は療養型病床100床(医療保険病床60床、介護保険病床40床の病院である。外来患者は一日平均230名の運営規模である。優先経営対策として外来部門を分離し、外来クリニックを開設することとした。患者の利便性を第一としつつ常勤医師の人員減、つまり人件費減を目的とした対策である。この結果は7ヶ月後の外来クリニック開設の折、明確に出た。病院は病棟(入院専用)のみの運営とし、常勤医師は2名の減員が実現した。

●対策 その2
 病棟、外来部門に非常勤医師が15名配置されていた。もちろん、地域ニーズ、患者の要望に対する配慮であるが、経営効率としていかがなものかを優先事項として検討した。以降6ヶ月間を調査期間として非常勤医師個々について、得たる診療収入を調査した。結果、日当10万円の脳外科医師の一日当たりの診療収入が4万円という結果を収め、4割、6名の非常勤医師が日当以下の収入であるというデータを得た。

 もちろん、費用対効果を越えて配置が必要な診療科目、医師がいる事が前提ではある。

 以上の調査結果である実績データを整理し、次のアクションは非常勤医師を派遣している医科大学への要請である。当医科大学は院長の出身大学でもある事から以下の要請に付、説明と根回しを行った。つまり、平均日当8万円を6万円に減額要請した次第。第一に学長、第二に本院病院長、そして派遣していただいている各科教室の教授、そして実務者の医局長の順で説明を行った。「時節柄、仕方がない」との交渉結果を得て後、各非常勤医師と個別交渉を行った。じっくり構えて当院の経営状況を前提に誠心誠意説明し理解を求めた。結果、了解を得る事が出来たが3名の非常勤医師が退任した。この事の経済効果は実に大きいものである。前述の脳外科医師は「オレが来なければ困るのだろう。だから来るけど、寝かせてもらうよ。」と言い切り、事実当直日(昼です)患者を診ずに寝ることに専念していた。この医師が退任したことは言うまでもない。この対策に足掛け10ヶ月を要したが、相当な経営対策となった。当院においてさらに三ノ矢、四ノ矢を対策したが、誌面の関係上次号にて紹介する。

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